Recipe #12 はじめての経営学 #2(マーケティング)

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そもそも「マーケティング」とは何か?

 まず、前提知識として、経営学には8つのジャンル(分類)があります。そのうちの1つが「マーケティング」です。ここをサラッと説明できると周りから「…こいつ、できるな」と思われます。

1.マーケティング (Marketing)‟ほったらかしでも売れる仕組みをつくる活動„                                        2.生産管理 (Production)                                           3.ロジスティクス (Logistics)                                         4.財務・会計 (Accounting & Finance)                                     5.組織・人事管理 (Organization & HRM)                                   6.情報管理 (Information)                                          7.経営戦略 (Strategy)                                            8.リーダーシップ (Leadership)

さて、この8つの先頭に君臨する「マーケティング」ですが、そもそもマーケティングとは一体何なのでしょうか?

「マーケティングって何ですか?」 もし後輩や上司にこう質問されて、的確に、しかも本質を突いて即答できる人はほとんどいないでしょう。

多くの人が、マーケティングを「広告を出すこと」「SNSでバズらせること」「市場調査をして営業すること」だと思っています。しかし、それは単なる手段に過ぎません。

マーケティングの本質を一言で表すなら、「最終的にほったらかしでも売れる仕組みをつくる活動」です。(※ここでいう「ほったらかし」とは、無理な売り込みや宣伝活動をしなくても良いという意味です)

これこそが、マーケティングの完全な定義(定石)です。経営学の神様と呼ばれるピーター・ドラッカーは、次のような有名な言葉を残しています。

「マーケティングの理想は、販売(売り込み)を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。」

※(出典:ピーター・F・ドラッカー著、上田惇生訳『マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則』ダイヤモンド社、2001年)

「買ってください!」と頭を下げて売り歩くのではなく、お客さんの方から「それ欲しい!売ってください!」と行列ができる状態を作る。つまり、自動的に商品が売れていく「仕組み」を作ることこそが、マーケティングの最大の目的なのです。

「ニーズ」と「ウォンツ」

では、その「ほったらかしでも売れる仕組み」を作るためには、何から始めればいいのでしょうか?

ここで重要になるのが、世の中の多くの人が根本から勘違いしている「ニーズ」という言葉の本当の意味です。

テレビのビジネス番組やマンガなどで、「これからの時代、お客様のニーズは『安くて多機能なスマートフォン』だ!」なんてセリフを聞いたことがありませんか? 実は経営学の視点から見ると、この言葉の使い方は完全に間違っています。

マーケティングの基本OSを頭にインストールするためには、まずこの「ニーズ」と「ウォンツ」の違いを明確に理解しなければなりません。現代マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラーは、人間の欲求を明確に切り分けています。

ニーズ(Needs): 人間が「何かを欠乏している」と感じている状態のこと。  (例:「喉が渇いた」「お腹が空いた」「移動したい」など、根源的な欲求)

ウォンツ(Wants): ニーズを満たすための「具体的な手段(モノやサービス)」のこと。 (例:「コーラが飲みたい」「ハンバーガーが食べたい」「車が欲しい」など)

つまり、先ほどの「安くて多機能なスマホが欲しい」というのは、具体的な手段を指しているため、ニーズではなく「ウォンツ」なのです。彼らの本当のニーズ(欠乏感)は、「遠くにいる家族と顔を見て話したい」「移動中の退屈な時間を潰したい」といったところにあります。

「ウォンツ」ばかり聞いていると会社は潰れる

 お客様が口にする「これが欲しい(ウォンツ)」ばかりを聞いて商品を作っていると、いずれ価格競争に巻き込まれたり、画期的な新商品(イノベーション)に一瞬で市場を奪われたりしてしまいます。

分かりやすい例が、【音楽】のCDとSpotify(サブスク)です。

日本の音楽業界が見ていたウォンツ: 「お客さんはCD(モノ)が欲しいはずだ」

SpotifyやApple Musicが見抜いた本当のニーズ: 「お客さんはCDという円盤が欲しいわけじゃない。『好きな音楽を、いつでもどこでも制限なく楽しみたい(体験)』のだ」

日本の企業が「自分たちが売りたいモノ(CD)」を守ることに必死になっている間に、海外企業は「顧客の本当のニーズ」を満たす全く新しい仕組みを作ってしまいました。結果として、音楽業界が「CD」を売ることに固執している間に、ストリーミングサービスがCDを買う必要性そのものを消し去ってしまったのです。

マーケティングの本当の仕事とは、お客様が言葉にしている「ウォンツ」の奥底にある、言葉にしていない「真のニーズ(穴)」を掘り起こし、それを満たすための全く新しい手段を提案すること。

これこそが、「ほったらかしでも売れる仕組み」を作るための第一歩なのです。

お客様がモノを買うまでの「4つの心理プロセス」

 お客様がモノを買うまでには、「ニーズ」→「ウォンツ」→「インテンション」→「ディマンド」という4つの心理プロセスが存在します。

「ニーズ」と「ウォンツ」を正しく見抜くことは、マーケティングにおいて非常に重要です。しかし、そこはまだゴールではありません。マーケティングの最終的なゴールは「ディマンド(実際に買ってもらうこと)」です。

ニーズやウォンツを見つけて終わりではなく、最終的に自社の商品・サービスを実際に購入していただくまでの道のりを設計しなければなりません

4つの心理プロセス

1. ニーズ(Needs)欠乏の自覚: すべての始まりです。人間が「何かが足りない、困った」と感じている根源的な欲求です。 (例:喉が渇いた、移動したい)

2. ウォンツ(Wants)手段の選択 :ニーズを満たすために、具体的なモノやサービスを思い浮かべた状態です。 (例:コーラが飲みたい、車が欲しい)

3. インテンション(Intention)購入の意思(意図): たくさんあるウォンツ(選択肢)の中から、「よし、これにしよう!これを選んで買おう」と決意した状態です。いわゆる「購入意欲」が高まった瞬間です。

4. ディマンド(Demand)購買力に裏付けられた需要 :マーケティングにおいて最も重要な最終ゴールです。単に「欲しい」と思っているだけでなく、「実際にそれを買うお金(購買力)を持っていて、交換が成立する状態」のことです。

マーケティングのゴールは、お客様に「ディマンド(実際に買ってもらうこと)」を起こしてもらい、それを「ほったらかしでも売れる仕組み」にすることです。

しかし、多くの企業やビジネスパーソンは、お客様の口から出る「〇〇が欲しい(ウォンツ)」だけを見て、商品を作ったり広告を出したりしてしまいます。

土台となる「本当のニーズ(穴)」を見誤ったまま、いくらステップを進めようとしても、お客様の心に「インテンション(よし、買おう!)」は生まれません。当然、最後の「ディマンド(購入)」という売上にも絶対に繋がりません。

最初の「ニーズとウォンツ」を正しく理解し、見抜くこと。これこそが、すべてのマーケティングの成否を分けるスタートラインなのです。

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