経営学には8つのジャンル(分類)があります。そのうちの1つが「マーケティング」です。 そしてマーケティングとは『ほったらかしでも売れる仕組みをつくる活動』のことです。
(※ここでいう「ほったらかし」とは、無理な売り込みや宣伝活動をしなくても良いという意味です)
【経営学の8つのジャンル】
1.マーケティング (Marketing)‟ほったらかしでも売れる仕組みをつくる活動„ 2.生産管理 (Production) 3.ロジスティクス (Logistics) 4.財務・会計 (Accounting & Finance) 5.組織・人事管理 (Organization & HRM) 6.情報管理 (Information) 7.経営戦略 (Strategy) 8.リーダーシップ (Leadership
企業のスタンスを決める「反応型」「予想型」「創造型」
「現代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラー(Philip Kotler)は、著書『マーケティング・マネジメント』の中で、「お客様のニーズに対して企業がどういうスタンス(向き合い方)で勝負するのか」という根本的な方向性を、以下の3つに分けて解説しています。
出典:『コトラー&ケラー&チェルネフ マーケティング・マネジメント[原書16版]』丸善出版 2022年
反応型マーケティングの事例
【すでにあるニーズ(困りごと)に、ストレートに応える】
事例: ノンアルコールビール(キリンフリーなど)
顕在化していたニーズ: 「飲み会には参加したいけど、車で来ているから飲めない」「明日の朝が早いから今日はお酒を控えたいけど、雰囲気は楽しみたい」
予想型マーケティングの事例
【社会の変化から、これから生まれる「未来のニーズ」を先読みする】
事例: コンビニの「サラダチキン」や高タンパク食品
予想した未来のニーズ: 「これからフィットネスブームが来る。健康志向が高まり、手軽に美味しくタンパク質を摂りたい人が爆発的に増えるはずだ」
「予想型」は「反応型」よりも「ほったらかし」が長続きする
「反応型(ノンアルコールビールなど)」もほったらかしで売れますが、すでにあるニーズに応えるためライバルもすぐに気づき、あっという間に真似されて「ほったらかし」のボーナスタイムが終わってしまうという弱点がありました。 しかし「予想型」は、ライバル企業が「え?なんでコンビニで冷たい鶏肉の塊なんか売ってるの?」と油断している間に準備を進めるため、自社だけが「ほったらかしで爆売れする期間(先行者利益)」を長く独占できるという圧倒的なメリットがあります。 つまり、予想型マーケティングとは、お客様自身がまだ「これが欲しい」と気づいていない場所に先回りして、あらかじめ理想の商品を置いて待ち構えておくという、非常に高度な『ほったらかしでも売れる仕組み』なのです。
創造型マーケティングの事例
【お客様自身も想像していなかった「未知のニーズ」を企業から生み出す】
事例: ソニーの「ウォークマン」(※現代ならAppleのiPhoneでも可)
生み出した未知のニーズ: 「音楽を外に持ち歩いて、歩きながら聴くという新しいライフスタイル」
創造型が「ほったらかし」でも売れる3つの理由
コンビニ、スーパー店舗で実行できるマーケティングの限界
コンビニやスーパーの店舗で働くスタッフ(店長クラスであっても)が、現場の権限で実行できるのは「予想型」までです。「創造型(新しいライフスタイルを生み出すような商品の開発)」は、本部のR&D(研究開発)部門や経営陣の仕事になります。しかし、「予想型」のマーケティングであれば、現場の売り場責任者でも完璧に実行できます。
「今年の夏は例年より暑くなる予報だから、ミネラルウォーターの『フェイス数(陳列幅)』を広げて在庫を厚くしておこう」
このような計画を立てて実行している時点で、あなたはもう、誰が何と言おうと立派な「マーケター」なのです。

Recipe #13 まとめ
今回解説したコトラーの3つのアプローチは、どれが一番優れているかという単純な話ではありません。お客様のニーズに対して、企業がどのスタンスで挑むかの違いです。
- 反応型は、目の前にある困りごとを確実に解決する「確実だけど競争が激しい」基本の型。
- 予想型は、これから生まれる未来のニーズを先読みする「先見の明が必要」な独占の型。
- 創造型は、未知のライフスタイル(新しい価値)を提案し「常識を覆すイノベーション」を起こす究極の型。
アプローチの難易度は違えど、目指しているゴールはすべて同じです。 それは、お客様の「悩みや欲求(ニーズ)」と、自社の「解決策(商品)」を完璧に一致させ、『ほったらかしでも売れる仕組みをつくる』こと。

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