Recipe #6 なぜ優秀な人から先に辞めていくのか?~「無能のフリーライド(タダ乗り)現象」

結論:自分の能力(問題解決力)が、「システム1」の人を養うためのフリーライド(タダ乗り)に使われている」という構造に気づいた瞬間、優秀な人は未練なく退職するから。

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なぜ優秀な人から先に辞めていくのか?

 優秀な人が辞めるのは、組織の評価構造が完全に歪んでいるからです。現場で泥をかぶって問題を解決する人に『他人の尻拭いという罰』を与え、実務から逃げて『脳がラクな行動』をする「システム1の被害者」に『出世という報酬』を与える会社に、彼らは静かに見切りをつけているのです。「自分が責任感を出して頑張れば頑張るほど、この会社の『無能なシステム』を延命させ、管理職を喜ばせるだけなんだ。自分の能力は、正当に評価されるためではなく、組織の歪みを隠蔽する『無料のクッション』として搾取されているだけだ」と気づいたのです。

この「優秀な人の見えない尻拭い(超過労働や機転)という「切符」を使って、現場を知らない上層部たちが「成功体験」という列車にタダ乗りしている現象」これを筆者は『無能のフリーライド(タダ乗り)現象』と呼びます。

  あなたの職場でも、こんな経験はありませんか? 『現場の泥臭いクレーム処理から、複雑なイレギュラー対応まで、全てを完璧にこなしていた「一番頼りになる優秀な人」が、ある日突然、静かに退職届を出す。』

『会社(バイト先)の上層部(店長、オーナー社長)が人件費削減と言い、勤務時間を大幅に削減。しかし勤務時間を短くしても仕事が減るわけではないので、「優秀な人」が時間外サービス労働をし、なんとか仕事を回していたが、後に優秀な人は「割に合わない」「バカらしい」と思い辞めていく。』

残された管理職は「最近の若手は根性がない」「彼にはウチの社風が合わなかった」などと的外れな言い訳をしますが、それは完全に間違っています。 彼らが辞めたのは、メンタルが弱かったからでも、仕事が嫌いになったからでもありません。

優秀な人から先に辞めていくのには、明確な「構造的な歪み(不条理)」が存在するのです。

「仕事ができる人」にだけ仕事が集中する不条理

[Recipe #5]でお伝えした通り、世の中にはマニュアル通りにしか動けない人(応用が効かない人)がたくさんいます。彼らは現場で「未知のトラブル(変数)」が発生した瞬間、応用が効かずに完全にフリーズします。

では、そのフリーズした応用が効かない人たちの「尻拭い」は誰がやるのでしょうか? そう、現場の状況に合わせて柔軟に対応(情報の構造化)ができる、「優秀なあなた」です。

本来なら3人で分担するはずの仕事が、「システム1」の2人がフリーズしているせいで、実質的に優秀な1人に全て重くのしかかります。しかし、日本の多くの企業では「誰がトラブルを解決したか」というプロセスを評価する仕組みがなく、基本給は「システム1」の人も優秀な人も同じです。 「能力が高ければ高いほど、他人の分の尻拭いまでさせられ、給料は1円も変わらない」。この不条理が、優秀な人のシステム2(脳のエネルギー)を容赦なく削り取っていきます。

「やってる感」を出すのが上手い人だけが出世する不条理

さらに絶望的なのが、評価の歪みです。 泥まみれになって現場のイレギュラー(変数の変化)に対応している優秀な人は、忙しすぎて上司へのアピールなんてしている暇はありません。

一方で、現場でフリーズしていた応用が効かない人たちはどうするか? 彼らは、実務から逃げて「綺麗なパワーポイントの資料作り」や「中身のない定例会議の設定」など、「仕事をしてる感(やってる感)」を出すことに全精力を注ぎます。

そして、現場のリアル(一次情報)を見ていない管理職は、この「綺麗な資料(ノイズ)」に騙され、「おっ、あいつはマニュアル通りにしっかりやってるな」と、やってる感だけが上手い人間を昇進させてしまうのです。

優秀な人は「会社の構造(歪み)」を見抜いている

優秀な人は、物事の「構造(原理や関係性)」を掴む能力に長けています。 だからこそ、彼らは気づいてしまうのです。

「あ、この会社は『現場で汗をかいて問題を解決する人間』が損をして、『安全な場所でやってる感を出す人間』が得をする構造になっているんだな」と。

情報の構造化ができる優秀な人にとって、そんな歪みだらけの組織(沈みゆく船)で頑張り続けることは、人生の貴重なリソースの無駄遣いでしかありません。だから彼らは、文句も言わずに静かに見切りをつけ、より自分の能力(OS)を正当に評価してくれる別の環境へと移っていくのです。

「部分最適」「セクショナリズム」「官僚制の逆機能」

「部分最適」「セクショナリズム」「官僚制の逆機能」という3つの病

【部分最適】の犠牲者になる

 各部署や個人が「自分のKPI(目標)さえ達成すればいい」と動くのが部分最適です。本部が「人件費を削れ(本部の部分最適)」と命令した結果、現場が崩壊しかけます。 では、誰が会社全体の帳尻を合わせるのか? それが、全体最適(未来の変数)が見えてしまう優秀な人です。「他人の部分最適のツケを、優秀な人が無給で全体最適化させられる」から辞めるのです。

【セクショナリズム】の緩衝材(クッション)にされる

 部署間に「壁」ができ、お互いに責任を押し付け合うセクショナリズム。 「それは本部の仕事だ」「いや現場の責任だ」とエリートたちが不毛なキャッチボールをしている間、お客様(目の前の炎上)を待たせるわけにはいきません。結局、優秀な人が部署の壁を越えて泥をかぶり、「サイレント・クッション(緩衝材)」としてすり減っていくのです。

【官僚制の逆機能】が暗記エリートを量産する

 これこそ究極の答え(ロバート・マートンの社会学理論)です! 組織が大きくなると「マニュアル(規則)を守ること自体」が目的にすり替わります。すると、「マニュアル通りにやって現場を崩壊させるポンコツ」がお咎めなしになり、「マニュアルを破って現場を救った優秀な人」が、逆に「勝手なことをするな」と評価されなくなる。 手段(ルール)の目的化が、優秀な実務者を絶望させるのです。

Recipe #6 まとめ:なぜ優秀な人から先に辞めていくのか?

 優秀な人を組織に留めるには、「表面的な『やってる感』に騙されるのをやめ、現場のイレギュラー(変数)を泥臭く処理している人間の『見えない苦労』を構造的に評価し、正当な報酬を払うこと」です。あと「部分最適」「セクショナリズム」「官僚制の逆機能」の3つの病に留意すること。

「いつも助かってるよ、ありがとう」という言葉(システム1への慰め)だけでは、優秀な人は引き留められません。評価と報酬という「システム(構造)」そのものを変えなければ、あなたの組織からは確実にエースから順番に消えていくでしょう。

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