Recipe #5 なぜ高学歴(がり勉)なのに仕事ができないのか?

結論:彼らは「暗記のカタログ」を持っているだけだから 「高学歴(ガリ勉)なのに現場で仕事ができない人」。その正体は、物事の原理(なぜそうなるか)を知らないまま、「問題Aが来たら、答えBを書く」という【条件反射のカタログ】だけを脳内にパンパンに詰め込んで、小・中・高・大学を卒業してしまった人たちです。

※このブログで言うところの「高学歴」とは、いわゆる「ガリ勉」のことを指します。部活やゲーム、友達と外で遊ぶなどの経験を積まないまま勉強ばかりして、一流大学を卒業した人をこのブログでは「高学歴」といいます。

 かつての「センター試験」をはじめとする日本の受験システムの多くは、アメリカの認知心理学者ジェローム・S・ブルーナーの言う「発見学習(Whyを問う)」ではなく、「過去問のパターン認識と暗記(Howの詰め込み)」だけで高得点が取れてしまう【構造的なバグ】を抱えていました。「高学歴(ガリ勉)なのに仕事ができない人」は日本の受験システムの被害者かもしれません。

高学歴(がり勉)の人は、『学問の本質(構造)を理解するのではなく、ただ目の前のテストを「いかに効率よく高得点(ハイスコア)を叩き出すか」という【スコアアタックのゲーム】』としてこのゲームを攻略してきた人です。

企業が高い給料(プレミアム)を払って一流大学卒を採用するのは、「彼らの優秀な脳のカロリー(システム2)をフルに使って、自社が直面する『正解のない複雑な課題』を泥臭く突破してほしいから」です。つまり、企業側が高学歴(がり勉)の人の対しての「期待値が高い」ので、「仕事ができない人」がでてくると「目立つ」という構図です。

目次

情報の構造化

「情報の構造化」とは何か? ズバリ、『物事の「構造(原理や関係性)」を掴んでいる状態(理解している)』こと。これを「情報の構造化」と呼びます。

アメリカの認知心理学者ジェローム・S・ブルーナーは、名著『教育の過程』岩波書店(1963年)の中で、「個別の知識(丸暗記)ではなく、学問の基本的な『構造』を理解することの重要性」を強く提唱しました。 ブルーナーは、情報を構造化することには以下の強力なメリットがあるとしています。

  1. 記憶の忘却を防ぐ(パターンの理解) 人間の脳は、バラバラの事実をそのまま覚えておくことは非常に苦手です。しかし、個々の情報を「構造化されたパターン」の中に位置づけることで、初めて長期的に記憶し、必要な時に引き出すことができます。(※構造化されていない知識は、すぐに忘れて使えなくなります
  2. 「学習の転移(現場での応用)」が可能になる ブルーナーは「構造を理解することこそが、学習の転移(=応用)の基礎である」と述べています。基本的な原理さえ分かっていれば、次に全く新しい問題(未知のトラブル)に直面しても、「あ、これはあの原理と同じ構造だな」と自分で答えを発見することができます。
  3. 理解が容易になる どんなに複雑な事象でも、その根底にある「基本的な考え方(構造)」さえ掴んでしまえば、理解は圧倒的に早くなります。

つまり、テストに出る個別の答えだけを詰め込んだ「受験システムの被害者」は、この「構造化」のプロセスを丸ごとすっ飛ばしているのです。これが「高学歴(ガリ勉)なのに仕事ができない人」の正体です。

構造化して考える機会

「部活、ゲーム、外で友達と遊ぶ(カラオケやボーリング、サッカー、草野球など)」という経験の中でビジネス(社会)でいうところの「理不尽な上司やクライアント、チームの不和」、「想定外のシステムエラー」に該当する問題がたびたびおきます。これらが「構造化して考える機会」を与えてくれます。

「ガキ大将が自分都合で勝手にルールを変えてきた、どうやって交渉・反論する?」

「チームの中にめちゃくちゃ不機嫌でやる気のない奴がいる、どうやって動かす?」

「予定していた空き地が別のグループに取られた、別の空き地を探す?交渉する?」

これらの「部活、ゲーム、外遊び」という、活動、遊びの中で、子供たちは無意識に「状況(変数)を読み取り、全体の構造を理解し、その場で最適な仮説を立てて実行する」という【 システム2 】をフル稼働させています。これこそが、社会に出てから最も必要とされる「応用力」の正体です。

高学歴(ガリ勉)の人は、「部活、ゲーム、外遊び」をせずに勉強ばかりしていたので、「構造化して考える機会」に恵まれていません。高学歴(がり勉)人は「学校の勉強」でも「部活、ゲーム、外遊び」でも「構造化して考えるプロセス」を経験しないまま社会に出たのだ。

現場は「未知の変数」だらけの戦場

  今の学校のテストや大学の単位取得は、ブルーナーの言う「構造の理解」をすっ飛ばしても、「過去問の丸暗記(点と点の記憶)」だけでクリアできてしまうという致命的なシステム上の欠陥があります。

しかし、実際のビジネス現場(理不尽なクレームや想定外のトラブル)では、「過去問と全く同じ問題」は二度と出ません。常に状況(変数)が変わります。 本当の応用とは、「目の前の状況(変数)に合わせて、やり方を調整すること」です。原理がわかっていないと、調整するための「基準(ものさし)」がないため、少し状況が変わっただけでどう動けばいいかわからなくなります。

「受験システムの被害者」が現場でフリーズする瞬間

  構造(原理)を理解している人は、初めて見るトラブルでも「あ、要するにこれはあの時と同じ構造だな」と応用(知識の転用)ができます。 しかし、「受験システムの被害者」の脳内は、整理されていない「散らかった部屋」です。マニュアルに載っていない「未知の問題(変数)」が目の前に現れた瞬間、彼らの脳内の暗記カタログは検索エラーを起こし、「習ってません」「マニュアルにありません」と完全にフリーズしてしまうのです。

どうすれば「情報の構造化」ができる人材を育てられるのか?

どうすれば「情報の構造化」ができる人材を育てられるのか?

結論はシンプルです。 「答え(マニュアル)だけを教えるのをやめて、『変数』と『原理』も考えさせる環境を作る」こと。 そのための3つのレシピを紹介します。

【レシピ1】「How(どうやるか)」ではなく「Why(なぜこのルールなのか)」を問う

現場で部下が「これ、どうすればいいですか?」と聞いてきた時が最大のチャンスです。ここで「こうやって(How)」と答えだけを教えると、彼らは「散らかった部屋」にまた一つ暗記リストを追加するだけで、一生構造化できません。 必ず「マニュアルにはこう書いてあるけど、これ、そもそも『なぜ(Why/原理)』この手順になってると思う?」と問い返し、彼らの思考(システム2)を強制起動させます。これがブルーナーの言う「発見学習」の第一歩です。

【レシピ2】失敗した時に「抽象化」のトレーニングをさせる

トラブルが起きた時、「次から気をつけろ」で終わらせてはいけません。具体的な事例からエッセンスを抜き出す【抽象化】のトレーニングをさせます。

  • 事象:「電話でお客さんに時間を伝えたら、間違って伝わってクレームになった」
  • 抽象化の問い:「この失敗の『根本的な構造』って何だろう?」
  • 構造化された答え:「人間の耳(聴覚情報)は聞き間違うことがある。だから重要な数字は必ず視覚(メモやメール)で伝えるべきだ」 ここまで言語化させて初めて、別の仕事(未知の変数)にも応用できる「知恵(武器)」になります。

【レシピ3】評価基準から「ノイズ(丸暗記)」を取り除く

「役に立たないマニュアルを丸暗記している人」ばかりを優秀だと勘違いして出世させるから、組織がおかしくなるのです。 「言われた通りに作業したか」ではなく、「現場の想定外のトラブルに合わせて、どう機転を利かせたか(応用したか)」を評価してあげないと、誰も「自分の頭で考える(構造化する)」ようにはなりません。

高学歴(がり勉)の真のポテンシャル

高学歴(ガリ勉)の人たちが持つ最大の武器は、「膨大な情報を処理し、苦痛に耐えながら長時間机に向かい続けることができる」という、圧倒的な基礎体力です。

 つまり、彼らは「システム2(論理的思考)」を連続稼働させるための【 ハードウェアのスペック自体は、一般人よりもはるかに巨大で優秀 】なのです。ただ、これまでの人生で「用意された正解を探す(システム1)」というソフトウェアしか使ってこなかったため、宝の持ち腐れになっているだけ(OSが古いだけ)という状態です。

高学歴(がり勉)の人のポテンシャルを引き出すために、彼らに【 新しいゲームのルール(評価基準) 】を再定義してあげる必要があります。

旧ルール(受験): 「100%の正解」を出せば勝ち。間違えたら減点。

新ルール(ビジネス): 正解なんて最初から存在しない。泥臭く変数を拾い集め、「現時点での70%の仮説(構造化)」を最速で組み上げた者が勝ち。行動して間違えるのは「データ収集」だから加点、フリーズして動かないのが最大の減点。

 彼らに突然「ゼロから新規事業を作れ(変数の海に飛び込め)」と言っても、OSが対応できずに確実にフリーズします。まずは、「安全な変数のプール」で構造化のトレーニング(遊びのやり直し)をさせます。

正解のない小さな問いを与える: 「来月の社内懇親会、予算ゼロでみんなが盛り上がる企画を3つ考えて(仮説構築)」など、マニュアルがないミッションを与えます。

プロセス(システム2の稼働)を徹底的に褒める: 結果が失敗しても「その変数を組み合わせて、そのストラクチャー(企画)を立てた論理的思考は素晴らしい!」と、彼らのシステム2の稼働自体を承認します。

これを繰り返すことで、「あ、間違えても怒られないんだ。正解を探すんじゃなくて、自分で構造(仮説)を作っていいんだ!」と彼らの巨大なシステム2がビジネスモードで起動し始めます。元のハードウェアが優秀な分、一度「応用(構造化)」の快感を覚えた彼らの成長スピードは凄まじいものになります。

Recipe #5 まとめ:なぜ高学歴(ガリ勉)なのに仕事ができないのか?

  今の学校のテストや大学の単位取得は、「構造の理解」をすっ飛ばしても、「過去問の丸暗記」だけでクリアできてしまうという致命的なシステム上の欠陥があります。 そのため、一流大学を出ていても、物事の「構造(原理や関係性)」を掴んでいない状態、つまり仕事で応用が効かない人が生まれてしまうのです。

大切なのは、『「知っている(単なる知識)」を「構造化された状態で知っている(現場で使える知恵)」まで持っていくこと』なのです

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