経営学には8つのジャンル(分類)があります。そのうちの1つが「組織・人事管理」です。 そして組織・人事管理とは『人間の弱みを仕組みで補い、個人の能力(ポテンシャル)を引き出す活動』です。そして組織・人事管理のテーマでもあります。
【経営学の8つのジャンル】
1.マーケティング (Marketing)‟ほったらかしでも売れる仕組みをつくる活動„ 2.生産管理 (Production)‟いつでも商品がある状態を、ムダなくつくる活動„ 3.ロジスティクス (Logistics) 4.財務・会計 (Accounting & Finance) 5.組織・人事管理 (Organization & HRM)‟人間の弱みを仕組みで補い、個人の能力(ポテンシャル)を引き出す活動„ 6.情報管理 (Information) 7.経営戦略 (Strategy) 8.リーダーシップ (Leadership)
人事部、人事担当の仕事
人事部、人事担当の主な仕事は、大きく分けると以下の4つです。大企業と、スーパーやコンビニの店舗現場とで対比させてみましょう。
① 採用(リクルーティング)
- 大企業では: エントリーシート選考、適性検査、複数回の面接。
- スーパー・コンビニでは: 応募の電話対応、履歴書の確認、アルバイトの面接、そして何より「こいつはバックレないか?」の見極め。
② 育成・研修(人材開発)
- 大企業では: 外部講師を招いたマナー研修やeラーニングなど。
- スーパー・コンビニでは: レジ打ちの指導、品出しのOJT、そして「誰でもできるレシピ(仕組み)」を作って教えること。
③ 評価・配置(タレントマネジメント)
- 大企業では: MBO(目標管理制度)、昇給査定、部署異動など。
- スーパー・コンビニでは: パートさんの時給アップの判断、シフト作成、そして日々の人員の適材適所の配置。
④ 労務管理(コンプライアンス)
- 大企業では: 給与計算、社会保険の手続き、残業時間の管理。
- スーパー・コンビニでは: ここは大企業も現場も基本は同じです。ただし現場特有の過酷な業務として、「突然の欠勤の穴埋めによるシフト調整(自ら出勤する等)」という、最も頭を悩ませる労務管理が待っています。
組織・人事管理 (組織における人の管理)
経営学の巨人、ピーター・ドラッカーは自身の著書『マネジメント』の中で、組織における人の管理(マネジメントの役割)をこう定義しています。
「マネジメントとは、人にかかわるものである。その機能は、人が共同して成果をあげることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることである」
この「強みを発揮させ、弱みを無意味なものにする」というフレーズが、ドラッカーの組織・人事論のすべてが詰まった真髄です。 ドラッカーは、「人間の弱み(性格や脳の特性)なんて直るわけがない。だから、弱みが出ても問題が起きない『仕組み(組織)』を作れ」と言っているのです。
当ブログでは「組織・人事管理」を『人間の弱みを仕組みで補い、個人の能力(ポテンシャル)を引き出す活動』と定義します。
「人間の弱み」の正体と、仕組み化の絶対条件
では、この「弱みが出ても問題が起きない仕組み」を作るためには、何が必要なのでしょうか? その第一歩は、マネジメントする側(責任者や店長)自身が、人間という生き物の「初期設定(脳のバグ)」を正しく理解することから始まります。
私たち人間は、放っておけば無意識に思考をサボる「認知のけち」であり、直感や好き嫌いで判断を誤る「バイアス(偏見)まみれ」の生き物です。 さらに恐ろしいのが、能力が低い人ほど自分を過大評価してしまう「ダニング・クルーガー効果(馬鹿の山)」というバグが標準装備されていることです。「自分は正しく評価できている」「自分は仕事ができる」という根拠のない自信が、現場を崩壊させます。
「気合を入れて公平に評価しろ」という精神論は、これらのバグを無視した暴挙です。 本当の組織づくりは、責任者自身が「自分もスタッフも、所詮は認知のけちでバイアスに支配されており、馬鹿の山に登ってしまう危険性がある」という事実を深くメタ認知(客観視)することからスタートします。
その絶望的な大前提に立った上で、「それでも間違えようがない手順」や「個人の思い込みが介入できない評価基準」を構築すること。これこそが、ドラッカーの言う「弱みを無意味にする『仕組み(レシピ)』」の正体なのです。
- 認知のけち: 脳が疲れるのを嫌がり、深く考えることを放棄して直感で答えを出そうとする「思考のサボり」。
- バイアス: 「自分の感覚は正しい」という思い込みや先入観によって、判断を狂わせる「脳のエラー」。
- ダニング・クルーガー効果: 能力が低い人ほど自分を過大評価してしまい、客観的な実力に気づけない「馬鹿の山」現象。

まとめ
人事部が存在しないスーパーやコンビニの現場では、責任者が孤独な「一人人事部」として、採用から労務までの過酷な業務をこなさなければなりません。だからこそ、疲労した脳は思考をサボり(認知のけち)、直感(バイアス)に頼り、時に自分のマネジメント能力を過信(ダニング・クルーガー効果)してしまいます。
しかし、ドラッカーが言うように、人間の弱みや脳のバグは「気合い」や「精神論」では絶対に直りません。 真の組織・人事管理とは、まずリーダー自身が「人間は間違い、サボり、勘違いする生き物だ」と深くメタ認知すること。そして、そのどうしようもない弱みが出てもお店が正常に回る「仕組み(レシピ)」を作ることです。
人を無理に直そうとするのをやめ、「仕組み」でカバーする。それこそが、個人のポテンシャルをムダなく引き出し、お店に利益をもたらす最強のマネジメントなのです。

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